【ショートショート】／『軌跡』

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http://www.youtube.com/watch?v=nDsFGJXPNFw&feature=related

窓の外から　町内会長の、呼び掛ける　声が。
「そろそろ集まってくれ～　今日は、頼むぞ、　まだ若手なんだからな」

町内会を盛り上げる為にと、決まった草野球大会　面倒だが　これもお付き合い
都会の大学生活からUターンして　４年目　生活も落ち着き　退屈ぎみな田舎生活
高校時代の野球グラブ　押し入れの奥を探す　どこかウキウキしてる　自分がいる。

ポロッと　何かが転がり落ちる。
ポンポンと弾んで　部屋の向こうの壁で跳ね返る。

懐かしいな～　子供の頃は身近にあった　『スーパーボール』　
大人になるにつれ　何処かえと消えていく
かといっって　何かの拍子に　数年おきに現れる
俺の感覚だと　３～４年おきかな

いつも　そう思いながら　投げてみる
思いのほか　ジャンプする
オットット　記憶の中の高さを超えてゆく。
１０回程　繰り返し　壁や床に投げてみる
・・・・・・・・・・ああ、このくらい跳ねるんだっけ
確認作業の終了と共に、またどこかへと消えてゆく。

今、握っている　透明な中に虹色の線　キラキラの入った　『スーパーボール』

右回転　　・・・・・・　　おっ！　思ったより変化　　　　　　　　王子サーブの様に
スナップ効かす・・・　おっ！　今曲がって落ちなかったか　高速スライダーの様に
パッと放す・・・・・・　 おっ！　予測不能なブレ玉　　　　　　無回転シュートの様に



なんか進化してないか？　
４年振り？　オリンピックかクラシック？　ワールドカップじゃあるまいし
人知れず　テクニックを磨き筋トレしてたりなんかしてたりして

ばかな、ただの『スーパーボール』に話しかけるなんて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見つめている。

なあ、お前の描く軌跡は　栄光の架け橋へと続くのか？

俺は　『スーパーボール』を一番上の引き出しに　そっとしまう

４年後　俺はどうしてるんだろうか？

古びてかたくなっってしまったグローブを　揉みながら　部屋を出る

高校の　あの頃に戻って　今日を楽しもう

少しずつ　日々は　変わるかもしれない。



　　　　　・終・

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【ショートショート】 ： 「 壁 」

～遠くで寺の鐘の音が聴こえている。～

　　【　壁　】


　　　　　　　　　・・・人には瞼が二つあると云う重い瞼を開く
真っ白い靄に包まれている．．．
二つ目の瞼を押し開き　足を踏み出す

二歩　三歩　と　進む　　　　　　壁がある。
五歩　六歩　と　下がる　 　　　壁がある。
朦朧とする脳　右によろめく　意思と裏腹に差し出す右手
七歩　八歩　と　タタタ　　　　　 壁がある。
　　　　　　　　・・・楳図かずお・・・神の左手悪魔の右手ってあったな
左を見る　真っ白い靄の向こうに感じる。
どうせあるんだろ　　　　　　　　壁。
天を仰ぐ　見えないが　届きもしない

腹が空いたな　こんなときでも　
手をあてる　と　大きなポケット　まさか　四次元ポケット
　　　　　　　　・・・なんでも出せる　なんでも可能という
釘を取り出す　握りしめて　　傷一つつかない
金槌を取り出す　跳ねされかえて指を打つ
ハンマーをツルハシを電動のこぎりを砕石ドリルを
音を失ったかのように　沈黙する
ラジウム塊を投げつける。　鉛が含有してるのか
誰にも気付かれない。
異次元にあるかのように　　　壁。
ドコでもドアが！　開く！ 　　 壁。
疲れ果て　腕も上がらない　前のめりに　倒れこむ
停止し塊のような脳　眼前に迫り来るゆく床。

『　壁か～～　　　　なんだっけ壁って　』

たたきつけられようとする脳　　 その間際　　落ちてゆく体

空気の抵抗を受け　ふわりと降り立つ
土の柔らかさ　　　くるぶしまで埋まる

見渡す限り何もない　　　風が吹いている。　
見上げると空がある　　　雲が流れている。
４次元ポケットはない　　臍（へそ）が揺れている。

はたして存在してたのか　　　　　壁。
あの左手に　そして床にも　　　　壁。
いまとなっては　どうでもいい　　壁。

とりあえず 　歩き出す　あの鐘の下へ
今度は　自分で　つくために。

　　　　　　　　　　　・終・

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